丸い課長と四角い私
顔を上げてずり落ちていた眼鏡の位置をなおし、云われたやり直しを始めた。
蔵田課長と私は、犬猿の仲。水と油。
……まあ、そんな感じ。
奴は口を開くと、私を小莫迦にした発言しかしてこない。
私もすぐに、売り言葉に買い言葉、で返してしまうし。
だいたい、ふたりとも眼鏡だが、奴が細い銀縁ハーフリムの、オーバルタイプに対し、私はプラスチックの、赤スクエア。
そこからあっていない。
どうしてそこまで反りがあわないのかわからないが、……そんな私たちふたりには秘密がある。
その月の最終金曜日。
仕事が終わった私は、近くの大型書店をうろうろしていた。
別に買いた本がある、とかでもなく。
なにか探している、とかでもなく。
ブブブッと鞄の中で震えた携帯を慌てて取り出す。
【どこ?】
【コミックスコーナーです。
でも、そっち行きますよ】
入ってきていたメッセージに手早く打ち返す。
すぐに既読になり、返信が表示された。
【じゃあ、洋書コーナー】
【了解です】
云われた場所に行くと、私を見つけたその人――蔵田課長はくすりと笑った。
「また少女まんが?」
蔵田課長と私は、犬猿の仲。水と油。
……まあ、そんな感じ。
奴は口を開くと、私を小莫迦にした発言しかしてこない。
私もすぐに、売り言葉に買い言葉、で返してしまうし。
だいたい、ふたりとも眼鏡だが、奴が細い銀縁ハーフリムの、オーバルタイプに対し、私はプラスチックの、赤スクエア。
そこからあっていない。
どうしてそこまで反りがあわないのかわからないが、……そんな私たちふたりには秘密がある。
その月の最終金曜日。
仕事が終わった私は、近くの大型書店をうろうろしていた。
別に買いた本がある、とかでもなく。
なにか探している、とかでもなく。
ブブブッと鞄の中で震えた携帯を慌てて取り出す。
【どこ?】
【コミックスコーナーです。
でも、そっち行きますよ】
入ってきていたメッセージに手早く打ち返す。
すぐに既読になり、返信が表示された。
【じゃあ、洋書コーナー】
【了解です】
云われた場所に行くと、私を見つけたその人――蔵田課長はくすりと笑った。
「また少女まんが?」