丸い課長と四角い私
それに、
『俺の女、ここまで傷つけて。
死ぬほど後悔、させてやる』
ってくすくす笑っている、よ、嘉規(よしのり)……さんは、めちゃくちゃ怖くて、私の方が泣きそうでした。



嘉規さん曰く、円満に話し合いは終了し、西田くんは会社を辞めた。
もう西田ママからかかってくることはないと思いつつも、嘉規さんの勧めもあって、携帯は解約し新規契約をした。

「逆恨みされると面倒だし。
まあ、そうなったらそうなったで、俺が痛い目みせてやるけどな」

やっぱりおかしそうにくすくす笑っている嘉規さんは怖い。
ふたりでいるときはときどき“俺”って云って口調が変わる。
あれがどうも素、というか昔はそうだったみたい。

「今日はなに食べる?
そろそろ暑くなり始めたし、イカとかどうかな」

「は?
なに云ってるんですか?
これからの時期に備えてスタミナつけなきゃ!
肉ですよ、肉!」

「どうして君はいつも、莫迦のひとつ覚えみたいに、肉しか云わないのかなー?」

「だって、あなたと違ってまだまだ若いので」

二枚のレンズを挟んでにらみあう。
しばらくして嘉規さんははぁっと小さくため息をついた。

「わかったよ。
肉……」

「いいですよ、イカで」

「は?」

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