丸い課長と四角い私
とうとう、ふぇーんと泣きだしたナルをたまらなくなってぎゅっと抱きしめた。

……というか。
ほんとは泣かせる必要、ないんだが。

想いを通じ合わせた日。
泣いたナルが可愛くて。
それ以来、ついつい泣かせたくなる。

「ん?
だって、なに?」

「まわりに、贔屓されてる、とか、贔屓してる、とか、思われたく、ないん、です……」

しゃくりあげながら話すナルは、まるで小さな子供みたいで可愛い。
まじめなナルらしい言葉にも納得だ。

「別に俺はナルが恋人だからって贔屓しない。
それはナルが一番、わかってるだろ」

「わかってます、けど。
そういうふうに、見る人も、いるので。
私はいいけど、嘉規さんが困る、から」

困ったように小首を傾げるナルに、思わず唇をふれさせた。
そのままナルの、眼鏡を外す。

……眼鏡を外すのは、より深いキスの合図。

そう教え込まれているナルはゆっくりと、その濡れた大きな瞳を閉じた。
再びふれさせた唇に、ナルの吐息が漏れる。
何度もその薄い唇を喰んで感触を楽しんだ後、彼女の中へと進入した。
互いの舌がふれるたび、ナルが甘い吐息を漏らす。
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