丸い課長と四角い私
それさえも愛おしくて、漏らさずすべて、吸い込んだ。
銀糸をつなげたまま唇が離れると、ナルは熱で潤んだ瞳で、ぼーっと俺を見上げていた。

「俺はいいんだ。
ナルがつらくなければ」

また、その唇に口づけを落とすと、ナルの手が俺のシャツを掴む。
懇願する、その瞳にゾクリとした。
そのままベッドに運び、思う存分ナルを可愛がり……この話は、うやむやになってしまった。



その後。
この話を再びすることなく、慰安旅行の日を迎えてしまった。
確かに社内の旅行で大手を振っていちゃつくことはできないが、少しくらい、と思う。
第一、一緒に暮らしている現在、二日もこんな状況なんて耐えられるはずもない。

悶々としながら迎えた夜の宴会。
課長の俺は当然上座。
なるべく人から離れたいナルは遙か遠くの、下座の幹事の前。
部内の慰安旅行とはいえ、遠すぎる。
苛ついているのをまわりに悟られないように、完璧な笑顔を張り付かせる。
注がれる酒にも、話しかけられる声にも、いつも通りを演じて返しながら、ずっとナルを気にしていた。

「佐々さん、飲んでるー?」

ナルを呼ぶ声に、ピクリと肩が震えた。
< 24 / 35 >

この作品をシェア

pagetop