ふたりぼっちの孤城
ペーパーナイフで封筒を開け、中身を取りだした。
「う゛わぁ・・・」
「ん?どうされました?」
顔を顰めご令嬢らしくない声を上げたわたしの後ろから山吹が手紙を覗き込む。
「来週末ですか。これはまた急ですね」
わたしと同じぐらい山吹も眉を寄せた。
でも顔がいいから様になっている。
(・・・・・ずるい)
「本当にね。まだ来てないパーティー用ドレスあったかしら?」
「会ったと思いますよ。確か菫色のものです」
「そう。ならいいわ」
気分を落ち着かせるように、山吹特製のはちみつ入りの紅茶をこくんと飲み込んだ。
社交界。
上流階級の人間として生きていくためには避けては通れない面倒臭い会だ。
嫌で嫌で嫌で嫌で仕方がない。
贅沢な暮らしを返上してでも出たくない。
山吹がいてくれさえすればわたしはどこでも生活していけるもの。
いちいち派閥を気にしないといけないし、毎回毎回大っ嫌いな義妹と比べられる。
お姉様夫婦と関わることは別に構わないけれど、父と継母とも顔を合わせて仲良いごっこを繰り広げないといけないのが苦痛でしかない。