ふたりぼっちの孤城
ニコニコニコニコ笑顔を貼り付けながら継母はわたしをこき下ろしてくる。

何が楽しいのかわたしには理解ができない。

立食形式で高級料理が並べられているが、あんな窮屈な空間ではとても味がしない。

わたしは自室で山吹と摂る食事が1番好きだ。

幾ら有名なシェフが作ったものでも、山吹がわたし好みに作った料理には到底及ばない。


「何か夜食のリクエストはありますか?」
「ビーフストロガノフ」
「畏まりました」


だから毎回夜食を用意してもらっている。

普段だったら夜食は太るから禁止されているがこの時だけは甘やかしてもらえるのだ。

消灯時間も23時に引き伸ばされる。

まぁ着替えたり夜食食べたりお風呂入ったりで大して自由な時間はないけれど。


「ねぇ、山吹」
「何です?」
「今回の社交界での山吹の配置は?」
「多分前回と同じく飲み物の給仕だと思いますよ」
「そう」


社交界で何よりも嫌なことは、山吹とまともに話せないことだ。

飲み物を受け取るときに多少のやり取りはあるが、長話は出来ない。

孤立無援。心細い。


(ただでさえわたしには山吹しかいないのに・・・)


不安な気持ちが顔に出ていたのか、山吹がわたしの頭にポンポンと触れた。

それから柔和な笑みを向けて安心させるように言葉を紡ぐ。

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