ふたりぼっちの孤城
相手の性格も知らずに上辺だけで判断し決断する人間に手を差し伸べるほど私は優しくない。

突きつけられた紙を見て麻生は杏は喚いていたが気にも留めなかった。

今まで散々彼女をコケにしていたくせに、何故私が杏の専属になると思っていたのだろう。

私の事だって見た目と彼女の専属侍従であるということにしか着目していないというのに。


(頭良いと言う割には詰めが甘すぎて話になりません)


麻生も麻生だ。

彼女が長年お仕えしている私ではなくぽっと出の藤を選ぶと考えるなど、彼女を侮りすぎている。

たかが藤如きが私に勝るわけがない。



次に向かったのは、今回の件で私が1番怒りを向けている柊の元だ。

都合のいい情報提供者の1人でしかないのに無自覚に彼女を傷つけたからだ。

一瞬でも私が柊を想っていると彼女に思われたことが不快で仕方がない。

廊下の掃除をしていた柊に、心情とは似つかぬ爽やかな笑みを向けながら解雇状を差し出した。

以前なら問題があったが、杏と柊あぐりが婚約したことにより両家を結ぶ役割を担っていた柊がお役御免となったのだ。

だから躊躇なく解雇に踏み切った。


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