ふたりぼっちの孤城
「お話が以上なら失礼します」
もう振り返らない。
「理人。要らぬ執着は身を滅ぼしますよ」
「姉上はそればかりですね」
要らないのは姉の方だ。
そもそも要らぬ執着が何かよく分からない。
私はただ彼女の幸せを望んでいるだけだ。
彼女とその父の考え方が全く違う時点で、私と姉が分かり合えるはずがない。
他の者よりも信頼していた姉だが、もう信じない。
信じるのはただ1人、彼女がいてくれればいい。
「柊のことは誤解だと分かったわ。でもデートは狡いと思うの」
事の顛末を知らない彼女が学校から帰ってくるなり開口一番にそう言った。
若干拗ねていて大変可愛らしいが、悶える前に否定しなければならない。
「あれはデートではありませんよ。お互いの気持ちがなければデートとは呼びません」
「ネットには片方でも好意を持っていたらデートだって書いてあったわよ?!」
(余計なことを・・・!!)