ふたりぼっちの孤城
ただその勢いが可笑しくて笑いが漏れた。


「ふふ、変な山吹」


普段落ち着いている山吹がわたしに振り回されている。

その状況が愉快で面白い。

山吹は咳払いをして気を取り直したようだ。


「それで、どんなデートがご希望ですか?デートと言っても色々種類があるんですよ」
「そうねぇ・・・待ち合わせをしてみたいわ」


わたしは待ち合わせて遊ぶような友達はいないし、山吹と一緒に家から出掛けるので人と待ち合わせをする習慣がなかった。

だから密かに憧れていたのだ。

少女漫画によくある「待った?」「ううん、今来たとこ」というやり取りをやってみたい。

それか、がらの悪そうな人に絡まれているところに颯爽と現れて「連れになんか用?」ってする王道のやつ。


「却下です」
「えっ」
「安全面を考慮するとそれは同意しかねます」


そう言われてしまうと何も言い返せない。

もしこれでわたしに何かあれば山吹の責任になって解雇されかねないものね。


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