ふたりぼっちの孤城
「大丈夫ですよ。見守っていていますからね」
「こっ、子供扱いしないでちょうだい!」
「してませんよ」
そう言いながらも撫でる手は止まらない。
言葉以上の意味が込められてそうな含みのある言い方をされたが、山吹の真意は分からない。
山吹は時々そのようなことをする。
その理由をいつか教えてくれるのかな。
ちなみに社交界に対する愚痴はまだある。
こうして2人でいるときはこんなにも近くにいるのに、社交界ではまるで他人のように振る舞わなければならない。
それがわたしと山吹の正しい関係だと見せつけられているような気持ちになって寂しい。
わたしだって主人と侍従がこんなに近い距離感でいることの方がおかしいということは分かっている。
だからと言って理解と納得は別物だ。
山吹は血の繋がった人よりもずっと家族だと思っている。
世間一般的には、毎日顔を合わさなくても、血が繋がってさえいれば家族なのだろうか。
じゃあ夫婦は家族じゃないのか。
その答えをわたしは知らない。
少なくともわたしたちはどの枠組みにも属さない。
(でも、わたしは山吹を唯一の家族だと思っているわ)
まだわたしの頭を撫でている山吹を見ながらそう思った。