ふたりぼっちの孤城


「では、はい」
「ん?」


遊園地のチケットを受け取った山吹がわたしに手を差し出してきた。

お金をとるわけが無いし、何を渡せばいいのか検討がつかない。


「これはデートなのでしょう?」
「そうよ」
「デートなのに手は繋がないんですか?」
「・・・繋ぐ」


そっと手を乗せると優しく包み込んでくれた。


「では行きましょうか」
「えぇ」


こうしてわたしの初デートは幕を開けた。





「次はどこに行きます?お嬢様」
「んー、山吹は行きたいところある?」
「でしたらあちらは如何です?列が短いのですぐに乗れるかと」
「じゃああそこにするわ」


山吹とのデートは順調だ。

待ち時間が長いと喧嘩しやすいだとかで初デートに遊園地は不向きらしいが、元々2人で出掛けまくっていたのでなんら問題はなかった。

でもあと一歩何が足りない気がする。

口調だろうか。

山吹はずっと敬語のままだし。

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