ふたりぼっちの孤城
観覧車は5組だけが並んでいたのであっさりと乗ることが出来た。

山吹はわたしの前に座って外の景色を眺めている。

とても絵になっているので、わたしは景色をそっちのけで山吹を見ていた。

隣が寂しいなと思いながら。


「? なんです?顔に何かついてますか?」
「何もないわ。・・・えっと、隣、座らないの?」
「それだとバランス悪くなりません?傾きますよ」


こういう時だけなんで現実主義なんだろうか。

それでもめげずに説得を試みた。


「少女漫画だとこういう時ヒーロー側から『隣いい?』って聞いてヒロインが頷いてヒーローが動く時にガタッと揺れて壁ドンみたいになったり事故でキスしたりするじゃない」


山吹だってわたしと同じ恋愛小説を読んだりするくせに察しが悪い。

熱弁するわたしを微笑ましく見つめた山吹は笑みを深めた。


「・・・そういうことしたいんですか、私と」
「へっ」


笑っているのにその目は本気で、言葉に詰まってしまった。

わたしはこの目に弱い。


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