ふたりぼっちの孤城
(待って、これじゃ、わたしが山吹にそうしてって言った様なものじゃない)


そのことに気づき顔が沸騰するように熱くなった。

また山吹の顔が見れなくなる。

今日のわたしはおかしい。

いつもよりフワフワしていて思考がまとまらない。

こんなにドキドキして、いっぱいいっぱいで、名前を呼ぶだけで気恥しいくて、こんなの、少女漫画のヒロイン────恋する乙女みたいじゃない。


(・・・違う、そうじゃない、そういうのじゃない、だって山吹はわたしの)


「椿がそのつもりなら、いくらでも付き合うますよ」
「いくらでもって・・・え?」


山吹はわたしのそばに来ていて背もたれに手を着いていた。

鼻先が当たりそうなくらい近い。

心臓がジェットコースターに乗ったときよりも速く動いている。


「このタイミングでキス、でしたっけ」


そう言うと山吹はわたしの唇をそっと撫でた。クラクラする。

山吹の色気が尋常じゃなくて、何も考えられなくなりそう。

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