ふたりぼっちの孤城
そのまま山吹がゆっくりとわたしに近づいてきた。


「や・・・理人!!!」


なけなしの力を振り絞って山吹を押した途端、ガタンっと音がして観覧車が揺れた。


「はーい、お疲れ様でしたー!」


テーマパークスタッフの声で我に返った。

山吹はもうわたしから離れていて、わたしが立ち上がりやすいように手を差し出してくれていた。

その手を取り観覧車を降りるとわたしの耳に顔を近づけた。


「あまり私を惑わせない方がいいですよ。勘違いしてしまいますから」
「か、勘違い?」
「はい。どうかお気をつけ下さい」


山吹はニッコリと笑ってそれ以上何も言わなかった。


(というか惑わせるってどういう意味・・・?)


デート中にそんなことした心当たりがない。

だからって素直に聞いても多分答えてくれない。

ただ黙ったまま、悶々として歩くスピードが遅くなっているわたしの手を引きリードしてくれる。

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