ふたりぼっちの孤城
機嫌はここ最近で1番いいようだ。


「さぁ帰りますよお嬢様。デートはお終いです」


山吹がわたしをお嬢様と呼んだことで急に現実に戻っていく気がした。

ついでに手も離された。

これで終わりだと明確に線を引くように。

それでもまだデートの余韻に浸っていたいわたしはおどけながら笑いかけた。


「帰るまでがデートじゃないの?」
「それは遠足です」


山吹は笑いながらもう一度手を繋ごうとした。

その時だった。


「理人くん!!」

知らない女性が山吹の肩をグイッと掴んだ。


「理人くんよね!?なんでっ」


山吹は直ぐにそれを振りほどき、冷たい目を向けた。


「誰です?」
「しらばくれないで!ホテルまで行ったのにあたしを抱かなかったのはアンタが最初で最後じゃない!」
「人違いじゃないですか?」


この女性が何を言っているのか全く分からない。

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