ふたりぼっちの孤城



結果的に言うとパーティーの準備は難なくこなされた。

まだ着ていないはずの菫色のパーティー用ドレスは傷一つ無い状態で保管されてあったし、山吹の配置は予想通りだったし、採寸の際に義妹と鉢合わせになることなどなかった。

もちろん面倒臭い父からのお手紙も届いていない。

物事が順調に進むと安堵感と同時に不安感が襲う。

良いことの後には決まって悪いことが起こる。

これは最早この世の摂理だ。

そんなことを考えているとメイクが終わり、次に髪のセットにかかる。

まぁわたしは座って鏡に映る自分と対面し続けるだけだからボーっとしてても問題はないけど。

ふと自分のデコルテを視点を移した。

今日のドレスは首から胸元にかけて三日月模様が編み込まれたレースで覆われている。

そのせいでデコルテがうっすらと透けて見えるのだ。

最初はなんとも思っていなかったが、上から見下ろすと少し胸の谷間が見える気がする。


(気の所為・・・気の所為、よね!)


「ひぁっっ」


そんなことを考えていると急にうなじがツーっと撫でられた。

犯人はたった1人しかいない。


「山吹!首は辞めてと言っているでしょう!?」


鏡越しに睨むが、山吹は全く動じない。

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