ふたりぼっちの孤城

自分で言い出したくせに。

頭に酸素が回らない。

苦しい。

わたしは山吹がいないとまともに生活が出来ないところまで来ている。

それほどまでに頼りきっていた。

それが山吹の足を引っ張っているとは知らずに。


「わたしと違って、貴方は自由でしょう?」
「お嬢さ「話は終わりよ、出ていってちょうだい。そして好きなところに行きなさい」


わたしはもう山吹を見ない。

見たらきっと揺らいでしまう。

頬杖をついていない方の手で服を握り締めた。そうでもしないと手が震えていることに気づかれる。

山吹ならわたしがいなくてもどこでもやっていける。

わざわざわたしに執着する理由なんてない。

それなら能力の低いわたしよりももっと凄い人の下で働いて、賞賛されて欲しい。

わたしの手の届かないところまで行ってくれないとわたしは山吹を忘れられない。

わたしは最後まで身勝手だ。

今まで散々振り回してきたし、迷惑もかけたし、別れの挨拶すら唐突に始める。

だから良くない主人に仕えていたと話の種にするといい。

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