ふたりぼっちの孤城
「わたしそんなこと一言も言ってないわよ!い、いくらなんでもデリカシー無さすぎないかしら!?」
「お嬢様が何も仰ってくださらないから、私は想像するしかないんじゃないですか」


飼い主に捨てられそうな子犬のようにそう言われるが、傍から見たらわたしの方が可哀想な状況じゃないだろうか。

ただここで更に言葉を重ねたところで誤解は解けないので素直に白状することにした。


「あーもう!このドレスだとちょっとお胸が見えるんじゃないかと心配していただけよ!!」


すると山吹にとって予想外の答えだったのかキョトンとされた。


(え、本当に胸の大きさを気にしていると思ってたの??)


それから大したことではないようにこう言ってのけた。


「あぁ、でしたら殿方と関わらなかったらいいんじゃないですか」
「え、直接的な解決方法はないの?」
「今更他のドレスを用意することは出来ませんので。それに私からしたら全く見えませんし」
「そう・・・かしら?」
「えぇ」


山吹の言った通りわたしぐらい真上から見ないと気にならないかもしれない。

そんなに近距離で話をする間柄の人なんていないから問題はなさそう。

そんな気がしてきた。


良いか悪いかは置いといて、山吹に言われたことはつい信じてしまう。


(家庭教師がクビになってからわたしに物事を教えたのは全部山吹だから、当然と言えば当然ね)


残りの支度は難なく終わり、遂に嫌で嫌で仕方のない社交界の会場の前まで向かうこととなった。
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