ふたりぼっちの孤城
でも山吹の口から聞きたかった。


「私も貴方が好きです。愛しております、私の椿」


山吹はそう言いながらわたしの頬に顔を寄せ、気づいたときにはリップ音が聞こえた。


「へっ?」
「ずっと貴方を名前で呼びたかったですし、こうして触れたかったです」


(そ、そこまでは知らなかったわ・・・!!!)


山吹はわたしを愛おしそうに見つめながら頬を撫でてくる。

そのせいで首まで暑い。


(というか今、わたし、山吹にキスされたの?頬に!)


徐々に状況を把握していくと、よりいっそ熱が籠った。


(りょ、両思い・・・なのよね!?そうよねっ?)


何だか頭がぽわぽわする。

色々なものが込み上げてきて涙目になったのを隠すようにギュッと目をつぶった。


「本当に椿は可愛いですね」


山吹は感極まったようにそう呟き、またわたしに近づくのを感じ取った。
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