ふたりぼっちの孤城



「す、ストップストップ!!名前呼びはいいから、これ以上はもう!」


これ以上山吹が近くなるとわたしがオーバーヒートしてしまう。

山吹は何でこんなに余裕なのだろうか。

ぐいぐい押しても山吹はあまり動かない。


「少し行き過ぎましたかね。これから慣れていってくださると助かります」
「さっきまで泣いていたくせに・・・」
「そりゃ貴方に突き放されたらああもなりますよ。貴方がいないと生きていけないんで」


ちょっと揶揄おうとしたら、思わぬ衝撃発言をされて何も言えなくなった。


(生きていけないって、え・・・?)


わたしは山吹に執着されている。

それも、わたしが思っていたよりもずっと強く、深く、重く。

その事実に歓喜している時点で、わたしはもう麻痺している。


「愛してますよ、椿」


ほら、これでわたしはまた狂った。
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