ふたりぼっちの孤城
いくら吸っても吸えている気がしない。

苦しい。

涙も溢れでてきて嗚咽が混じる。

あぁこんな姿、とても彼女には見せられない。

それなのにここを離れたらもう二度と彼女に会えないような気がして動けない。

今の私には許しを乞うことしか出来ない。










どれだけの時間をそうしていただろう。

涙はとうに枯れたし声だって上手く出せていない。

このまま独りで死んでいくような気さえした。

これが最期になるなら、ただ彼女との幸せな思い出に浸っていたい。


そう心から思ったとき、扉が開かれた。


彼女の部屋の明かりが私を照らす。

ただの照明だというのに私の心まで灯してくれるようだった。

これが幻覚ではないと確信したくて反射的に抱きつく。

抱きついたら抱きついたで離れられなくなった。

この温もりに浸っていたい。

私に失望したはずなのに、彼女は私を引き剥がそうとはしなかった。

< 155 / 190 >

この作品をシェア

pagetop