ふたりぼっちの孤城
各家への挨拶回りはいつも通り行われた。
そう、いつも通り。
わたしをコケ下ろし義妹を持ち上げられた。
ただそれだけ。
最初はムカつきもしたけれど、次第にどうでもよくなった。
一体何人がわたしが一言も発しなかったことに気づいたのだろうか。
多分誰もいないだろう。
今日はお姉様夫婦が参加しなかったものね。
義妹は持て囃されてキャッキャウフフしていたが、わたしは不特定多数より特定の人に褒められたい派だ。
(例えばそう、山吹とか・・・)
チラリと山吹の方に視線を送ると、人の良い老夫婦と仲良さそうに話していた。
(お相手は篠原夫妻ね。面倒な人に絡まれているとかじゃなくて良かったわ)
篠原家は三大財閥である宝来家の幹部の1つだ。人当たりが良く、敏腕だと聞く。
夫婦仲はとても良いのだが、子に恵まれず跡継ぎ問題が発生しているらしい。
養子を取ろうにも親戚に該当する者がいないとか。