ふたりぼっちの孤城
結局丸一日山吹のペースで事が進み、その間わたしはずっと翻弄されっぱなしだった。
さすがに食事は山吹の手ずからではなく自分で摂ったしお風呂も1人で入ったが、移動はその都度山吹にお姫様抱っこをされて運ばれたしほとんどの時間を隣にピタリと座られた状態で過ごした。
1回膝の上に乗せられそうになったときは流石に焦った。
そこまでいくと女性ではなく子どもとしてしか扱われなくなりそうだったからだ。
あくまでわたしは1人の人として見られたい。
ただそうなってくるとわたしも山吹を1人の人として見ないといけないわけで。
今までどちらかと言うと唯一の家族として接してきたからいきなりそう見ろと言われると正直戸惑うし気恥ずかしい。
元々距離が近い方ではあったが、それも家族愛的な意味合いが強かったからだ。
でも、昨日全て取っ払われた。
それを意識した瞬間、山吹が酷く遠くにいるように感じた。
わたし達は付き合ってはいない。
ただ両思いだというだけだ。
その間に契約書などは存在しない。
主従関係のままならば明確に契約書があり、それが存在する限り山吹はわたしのそばに居てくれるという確信があった。
それが感情という不確かなものの上で成り立っている現状では適応されない。
外的要因でいくらでもひっくり返る。