ふたりぼっちの孤城
てっきり義両親となる人だけだと思っていたのに。


「大丈夫です、椿。私が上手く立ち回ります」


わたしの異変に気づいた山吹はそっと手を添えてくれた。

そう、わたしには山吹がいる。

父がいるのだって山吹の計画の1部のはずだ。

そんなミスをこの場面でするわけがない。

山吹の言葉にこくんと頷くと山吹も頷き返し、ドアノブに手をかけた。


「失礼します。椿さんを連れて参りました」
「失礼いたします」


(椿"さん"!??)


山吹に続き一礼をしたが、『椿さん』という呼び方に引っかかった。

仮にわたしが許可していたとしても、その呼び方は人前でするべきではない。

山吹がわざわざそう呼んだ意図が掴めずにいると、かけられた声にさらに驚くことになった。


「お久しぶりだね椿嬢。お元気そうでなによりだ」
「ご無沙汰しております。篠原様」


なんと父とともに応接間にいたのは篠原夫妻だった。

最後に見かけたのは社交パーティーで山吹と話しているところだ。

現れたのが篠原夫妻ということで、わたしの仮説は崩れた。

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