ふたりぼっちの孤城
「ごめんなさい。貴方がこんなに追い込まれているなんて知らなかったの!これからは私が何とかするから、ここに残らない・・・?」


お姉様は善良な人だ。

わたしとは違い優秀だったため、父にも継母にも義妹にも、もちろん使用人にも貶められることなくここまでやってきた。

それ故に悪意に鈍感だ。

だから平然とわたしにここにいてくれと言えるのだ。

きっとお姉様は家族がバラバラになる恐怖心や、わたしへの罪悪感で今ここにいる。

そして今からでも関係を修繕できると本気で信じている。

どこか傲慢で、それでいて優しい人だ。

その優しさを昔のわたしにくれていたら、この瞬間、なにかが変わっていたのだろうか。

今更過去に縋るつもりは無い。


「いいえ。わたしはここを出ていくってもう決めたの」
「どうして?ずっとお父様に認めてもらえるように頑張っていたじゃない」


いつの話をしているのだろう。

そんなのは父が再婚した時点で辞めた。

お姉様の中のわたしはずっと幼少期のまま止まっている。

それだけお姉様はわたしと向き合ってこなかった証拠だ。

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