ふたりぼっちの孤城
お姉様はわたしが1番苦しいときに婚約者の元へ通っていたのだから。

もちろんお姉様だってお母様が亡くなって辛かったのは分かっている。

それでもわたしは、一緒に寄り添ってくれる人を欲していたのだ。

あの時わたしのそばにいたのは理人だけだった。

大切なのはそれだけ。

だからそれ以外は要らない。


「わたしには理人さえいればもう全部どうでもいいの」
「え?」
「もういいの!もういいかなって思えたの・・・!」


晴れた笑顔でお姉様にそう告げた。


「だからさようなら、お姉様」


これは決別の言葉だ。

するとお姉様はまるでわたしが化け物かのような目つきで見てきた。

何故そんな目を向けられなければならないのかわたしには分からない。

今更お姉様とは分かり合えない。

わたし達は同じ建物で暮らしていたけれど、同じ家で生きてこなかったからだ。

わたしが家だと、自分の居場所であると感じたのは、自分の部屋だけだ。

お姉様とわたしは違う。

その事が明確に分かってよかった。

これで未練なく立ち去れる。
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