ふたりぼっちの孤城
「理人、もう行きましょう」
「はい」
理人が玄関の扉を開けた。
わたし達はもう振り返らない。
ここにはもう何もないから。
わたし達は新しい城へと一歩踏み出した。
あれから2年が経った。
わたしは無事18歳になり、理人と入籍した。
今は役所から帰り、まったりとしている。
生活感のない広いリビング。
ふいに時計が15時を告げる。
そしてなんとなくつけているテレビの番組が他のものへと変わった。
理人がおやつに買ってきたプリンを他愛もない話をしながら食べる。
窓からは空しか見えず、季節の移り変わりすら曖昧だ。
ここにはわたしと理人だけ。
何からも害されることなくゆったりと時間だけが過ぎていく。
これがわたしの幸せか。
「やっと2人きりね」
「これからもずっとそうですよ」
わたしのつぶやきに理人が応える。
そして理人はわたしの顎をそっと撫でた。
重なった唇は、カラメルの味がした。