ふたりぼっちの孤城
料理を全て終えると椿を起こすために寝室に向かった。

彼女はまだぐっすりと眠っている。

このまま寝かせておきたいが、1度何も言わずに仕事に出かけたら「何で起こしてくれなかったの！？寂しいじゃない！」と拗ねられたのでできない。

極力刺激を与えないように頭を撫でながら優しく話しかける。


「椿。起きてください。起きないのならもう行ってしまいますよ？」
「ん、おはよう理人」
「はい。おはようございます」


挨拶と重ねるようにおはようのキスをした。

同棲当初は照れて逃げていた椿も、今では私が焦らすと焦らしてみると「今日はしないの･･･？」とおねだりするぐらい受け入れてくれている。

ちなみにおねだりされたときは調子に乗ってしまい1回では終わらず、少し怒られた。

あと寝ぼけているときの第一声の「ん」にはあどけなさがありいつまでも愛でていたい。


「今日はフレンチトーストですよ」
「分かった。すぐに行くわ」


椿がベッドから降りたところを見て寝室の扉を閉じた。

夫婦になろうと着替えるときは出て行ってと目で訴えてくる彼女は大変奥ゆかしい。

余談だが私は彼女が仕える主ではなくなった今も敬語を使い続けている。

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