ふたりぼっちの孤城
敬語に慣れすぎていてむしろタメ口を使うのに違和感があるのだ。

彼女も同じらしく、対等になりたがっていてもそれについては言及しなかった。

私にとっての椿は崇めるべき女神と言っても過言ではないですしね。





朝食をテーブルに運んでいると椿がやってきて手伝ってくれた。

主従関係のままだったら断っていたが、同棲初日に「結婚するんでしょ？」と言われたら反対できなくなった。

その関係でティーカップとコーヒーカップ、あとワイングラスを除く全ての食器はプラスチックのものを買い揃えた。

一緒に食事をとり終えた後はお弁当を詰めて出勤の準備をした。

玄関まで行くと椿はとことこと着いてくる。


「行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます」


行ってらっしゃいのキスは椿からしてくれる。

私としては非常に仕事に行きたくなるなるのでしないつもりでいたが、ドラマに影響された椿が提案してくれたのだ。

もちろん私がそれを断るわけがなかった。

未だに慣れないのか手が緊張で震えている。

その震えさえ愛おしくつい抱きしめてしまいそうになる。

そのことに気づきもしない椿ははにかみながら私を見送ってくれた。

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