ふたりぼっちの孤城
それらに毎朝堪えなければならないので、私の朝は幸せな我慢に満ちている。





私の立場は現在、篠原グループの子会社の総責任者だ。

いきなり本社で重要職に就くと反感を買いかねないので、まずは子会社から経営してみようと篠原夫妻が提案してくださったのだ。

最初は敬遠されていたが今は難なく仕事をこなせている。

そろそろ本社に来てみたいかと言われたぐらいだ。

お昼になると1度彼女に電話をかけ、他愛もない話をする。

以前は暇なときに彼女が私に連絡をしてきていたが、今では逆だ。


「昼食はもう食べられましたか?」
『えぇ今日も美味しかったわ。あ、あと醤油と卵がそろそろなくなりそうだったから買ってきてちょうだい』
「分かりました」


そんなに長い時間はとれないが、これが午後の私の活力になっているのは間違いない。

ちなみに椿は私がいないときは一切外出をしない。

私がそのようにしれっと仕向けたからだ。

ただ彼女もそれに気づいていて、なんでもない日になんでもないことのように「これって軟禁よね?」と聞かれた。

黙って肯定すると「案外悪くないわね」と笑って容認してくれた。

その目には私への執着が滲み出ていて、思い出す度に胸が昂る。

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