ふたりぼっちの孤城
彼女が何故そう言ったのかは手に取るように分かる。

彼女がここに居続ける限り、私が真っ直ぐここに帰ると確信しているからだ。


自ら鳥籠の中に入る彼女は愚かで美しい。

私の目を惹き付けて離さない。


そんな椿はというと、私が会社に行っている間に洗濯物を干したり掃除をするなどの家事を行い、余った時間はのんびりと過ごす。

具体的には本を読んだりテレビを見たりゲームをしているそうだ。

わたしの当初の考えでは家事全般も私が行い、椿には自由気ままに生活してもらう予定だったが、私の負担になりたくないと自主的に取り組むと言ってくれたのだ。

椿の成長ももちろん泣けるところではあるが、それ以上に私のためと言う部分にいたく感動した。

夕方になると洗濯物を畳み収納してくれる。最初は上手く畳めなくてタンスに収まらないと嘆いていたことが懐かしい。

椿は興味のないことの呑み込みは遅いが、自身が決めたことに対する成長は早いのだ。

洗濯物の整理が終わると夕食の準備をしてくれる。包丁を使い慣れていないせいで最初は手を切ることもあり、私が止めようとしても椿はやると言い続け、今では簡単な料理ならレシピを見ないで作れるようになった。

椿の料理はどの一流シェフが作るものよりも何倍も美味しい。

今日の夕食は何だろうかと胸に期待を抱きながら帰宅した。


「おかえりなさい」
「はい。ただいま戻りました」


椿は私が帰るとパタパタと玄関まで来てぎゅっと抱きついてきた。

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