ふたりぼっちの孤城
彼女の喜びの表現が真っ直ぐで可愛い。

朝はキスをしてくるわりに、帰ってきたときは純新無垢な少女のように出迎えてくれるのだ。


「いい匂いがしますね。今日の夕食はなんですか?」
「ハンバーグシチューよ。いい感じに煮込めたの!」
「それは楽しみですね」


頭を撫でて褒めると頬を染めて表情が明るくなる。

そのまま自然におかえりのキスをした。彼女の顔が更に朱色に近づき可愛らしかった。





椿が作ったハンバーグシチューはやはり頬が落ちるほど美味しかった。

私が執事学校時代に使っていたレシピを元にしているはずなのに、私が作ったものと全然違う。

これは彼女の真心が込められているからだろう。

彼女の温かさに直接触れるようで、私によって夕食は至福の時間だ。

今は椿の髪を乾かしているところだ。

彼女は自分でやりたがったが、これも私と癒しになっていると言うと、ドライヤーを渡してくれた。

私が彼女の「結婚するんでしょ?」という言葉に弱かったように、彼女も私の言葉に弱いのだ。

そういうところも食べてしまいたくなるぐらい可愛い。


「ねぇ理人」
「何でしょう」
「明日は休みなのよね?だったらこの前テレビで紹介されてたカフェに行きたいわ」
「いいですよ」


休日は基本家でまったりするか椿の行きたい場所に連れていく。

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