ふたりぼっちの孤城
(決まったわ・・・!)
立ち去りながら自画自賛する。
我ながら今のはよくやった。
義妹の鼻っ柱を挫けたのではないだろうか。
散々山吹にしごかれた甲斐があった。
「椿嬢」
気分の良いまま退出しようとしたのだが途中で飛びとめられてしまった。
しかも相手が相手なので気分が急降下した。
(げっっ)
今わたしに声を掛けたのは財前菖蒲(ざいぜんあやめ)。財前家の跡取り息子だ。
有栖川家、宝来家と同じ三大財閥である大蔵家の傘下の1つで、同じく傘下の1つの継母の実家と現在仲が悪い為、当家と繋がり仲を修繕しようと企んでいる。
わたしに取り入ろうとしているが、どこか舐めたように接してくるため好きじゃない。
はっきり言って嫌いだ。
「何か御用かしら。・・・菖蒲さん」
「飲み物のおかわりはどうかと思ってさ」
「それは給仕の仕事よ。貴方がすることではないわ」
「それもそうだな」
仕方ないなとでも言わんばかりに持ってきていた2人分のグラスを給仕に返した。
なぜわたしがわがままを言ったみたいに振る舞うんだろう。