ふたりぼっちの孤城


山吹がカーテンを開けてから出て行くと、ノロノロとベッドから降りてクローゼットを開け、制服を取り出す。

制服はワンピースタイプだからわたしでも難なく着替えることが出来る。流石はお嬢様学校。



着替え終えたタイミングで紅茶のいい匂いが漂ってきた。

今日はアップルティーなのね。

コンコンコンとノックが聞こえ、入室の許可を出した。

山吹がワゴンを持って入ってきて丸テーブルに料理を並べていく。
わたしは椅子に座ってその様子を眺めていた。

手伝ったりなんてしない。

それは使用人である山吹の仕事だから。

まぁ1回手伝おうとしてうっかりお皿を割ってしまった時、危ないからと禁止されたのが大きな理由だけど。

あの時の山吹の顔、この世の終わりみたいだったわね。


(あのお皿、そんなに高かったのかしら?)


支度を終えた山吹も私の正面に座り、一緒に朝食をとり始めた。

本当は使用人は専属だろうがなんだろうが主人と共に食事をとってはいけないらしい。

でもまだ出会って間もない頃に「ひとりでたべるのは、や!」と言って駄々を捏ねたら「それなら仕方ないですね」と一緒に食べてくれるようになった。


髪をくくるのは山吹の仕事。

なんでもわたしの身支度を整えるのが1番楽しい仕事らしいので好きにしてもらっている。

山吹の少し骨ばった手で触られると心地いい。

なんかこう・・・ふわふわする。


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