ふたりぼっちの孤城
しかも立ち去らない。


(おかわり断ったんだからさっさと去りなさいよ!!!)


「にしても先程の杏嬢への返し、見事だったね」
「・・・当家にとって恥ずかしいところを見せたわね」
「いや、君を見直すいい機会になったよ。中高共に受験を失敗したと聞いた時はどうしたものかと思ったけれど、社交界で生きていく力はあるんだね」


(どうしたものかってなんであんたが困った風を装うのよ)


わたしを馬鹿にしたような言い回しをよくする菖蒲さんは本当にわたしを掌握しようとしているのだろうか。

もしかして無意識に行っているとでも言うのか。

だとしたらだいぶ重症だと思う。


(さっきからずっと何が言いたいのこいつは。わたしはさっさと退場して山吹の料理を食べたいのに!)


「女は馬鹿なくらいが丁度いいと言うし、どう?僕と婚約しない?」
「・・・そういうことはお父様を通してから仰って。良からぬ誤解をされるわよ」
「了承済みだよ。知らないの?今度君のお見合いが行われるんだよ」
「えっ?」
「あぁ、ホントに知らないんだね。可哀想。そういうことだから、先に唾つけておこうと思って」


なんであんたが選ぶ側のような発言をするのか、という反発よりも、お見合いという単語が引っかかった。

お見合いだなんてそんなこと、父からひと言も聞いていない。

わたしは父にこんな奴に売られようとしているのか。

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