ふたりぼっちの孤城
わたしに関心がないとは思っていたが、お払い箱みたいな扱いを受けるだなんて思ってもみなかった。


(言い方気持ち悪っ)


そんな混乱状態でも嫌悪感は出てくる。


「ね、悪い話じゃないと思うんだ」


そう言いながら菖蒲さんは自然に自身の左手とわたしの右手と絡めた。

流れ作業のように行われたので反応がワンテンポ遅れる。


「・・・距離が近すぎるわ」
「君は馴染みが無いかもしれないけれど、エスコートするならこれぐらい普通だよ」
「わたしにとっては異常よ」
「へぇ?手を握っているだけなのに?随分と初心だね」


恋人のように耳元で囁き、今度は空いている右手をそっとわたしの腰に当てた。


「ちょっ」


気持ちが悪い。

ゾワッと不快な感覚が全身を駆け抜けた。

誰にどう噂されるかなんてわかったものじゃない。

これが原因で婚約にでもなったら目も当てられない。

どうしたらわたしがこいつに絡まれたって信じてもらえるんだろう。

ただでさえ評判は最底辺に落ちきっていると言うのに。


(誰か、助け)
< 21 / 190 >

この作品をシェア

pagetop