ふたりぼっちの孤城


「失礼ですが、それは紳士のする振る舞いなんでしょうか?」
「山吹!」


声の方を向くと共に、するりと菖蒲さんの元から解放され、山吹の隣に戻れた。

助かった、と思った。

それに対して菖蒲さんは不愉快そうに眉を顰める。


「侍従の分際でこの僕に口答えするの?」
「侍従だからこそお嬢様をお守りするべく貴方に意見したんですよ」


山吹は動じずに作り笑いを浮かべ凄む。

それに気圧されたのか菖蒲さんが数歩後ずさった。


「・・・・・まぁ、いい。僕が椿嬢の婚約者になったらお前は解雇するからな」
「出来るといいですね」
「では椿嬢、また近いうちに会おう」
「・・・お待ちしておりますわ」


最後までわたしへの態度は変わらなかった。

山吹に言い返されてあっさりと逃げていったくせに。


お見合い問題が残っているが、今はもう疲れた。考えたくない。


「山吹」
「はい」
「帰りたい・・・」
「えぇ。帰りましょう」


先に進もうとした山吹の袖をキュッと掴む。

山吹は少し目を見開いて振り返った。


「あと・・・・・」
「あと?」


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