ふたりぼっちの孤城


「事実みたいです」


あまりにもあっさり言うものだから、動揺して紅茶のカップを落としかけた。


「え、嘘でしょ!?嫌よ!山吹何とかして!」
「出来ません」
「えっ」
「出来ません」


まさかの「出来ません」の一点張り。

それも全部よどみなく言い切られたのでこれ以上何も言えなくなった。

それと同時に、これまで何でも飄々とこなしてきた山吹にも出来ないことがあることに少なからず衝撃を受けた。

よく見れば山吹は腕を組んで指先をとんとんと動かしていた。

これは山吹が本当に機嫌の悪い時にする仕草だ。


「私が知れば潰しにかかることが分かっていたのでしょう。今までそうしてきましたからね。裏回し出来ないように情報規制をされていました。婚約者候補のいる家にも既に日時等連絡済みだそうで、潰しが効かないぐらい大きくなっていました。まるで癌のようですね」
「が、癌?」


思わず聞き返すと山吹はアルカイックスマイルのままスラスラと言葉を紡ぐ。

よっぽど不機嫌なようだ。


「えぇ。癌ですよ癌。取り除いても取り除いても再発してくるんです。全くもって厄介極まりないですよね」
「それはそうね・・・」

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