ふたりぼっちの孤城
言いたいことを一気に言ったからか山吹は一息ついてから真剣な表情でわたしと向き合った。
そして小さい子供に言い聞かせるように人差し指を立てる。
「良いですかお嬢様」
「なあに?」
「婚約させられたくないのなら絶対に笑いかけてはダメですよ。機嫌が悪そうにしていてください」
「作り笑いも?」
「あぁ、それはいいですよ」
要はわたしの機嫌が良さそうに見えたら婚約に乗り気だと勘違いされるから気をつけろと言いたいのだろうか。
「とにかく微笑んではダメです。そんなのを見たらお嬢様に求愛行動をしかねません」
思っていた理由と違った。
「大袈裟よ」
「どこがですか」
山吹はわたしを過大評価している節がある気がする。
(それよりも求愛行動っていうとなぜ孔雀のイメージがあるわね・・・?)
現実逃避として以前山吹と行った動物園で見た孔雀を思い浮かべていると、ペンのキャップを占める音がして引き戻された。
どこから持ってきたのか分からないホワイトボードに山吹が何かを書き出している。
わたしが現実に戻ってきたこと視認するとペンの動きを止め、説明を始めた。