ふたりぼっちの孤城
「それでは皆様、お部屋まで案内させて頂きます」
その所作は一つ一つ洗練されていて、山吹の侍従としての質を存分に見せつけた。
「ここでもお前は出しゃばってくるんだね」
「事前にお嬢様に任されましたので」
それでも懲りずに嫌味を言ってきた菖蒲さんには、前回と同じく圧のある笑顔でお応えする。
山吹は期待通りの働きをし続けてくれるのでわたしも頑張らないと、と手に力を込めた。
来客用の部屋に通し、改めて挨拶をして紅茶で一息ついた。
お互いのことは何となく知っているし、今更何を話せばいいのか分からない。
趣味とか休日の過ごし方などの話題が王道だとは思うが、全く興味がない。
「そういえば小耳に挟んだお話なのだけれど」
紅茶カップをソーサーに戻し、こう切り出した。
面倒事は後回しではなく早く終わらせるに限る。
ちゃっちゃと幻滅させて帰ってもらおう。
「お継母様と柾さんのお父様が最近親しいらしいの。本当なのかしら?」
ちなみにこれは本当だ。
山吹が言っていたので間違いはない。