ふたりぼっちの孤城
しばらく均衡状態が続いたが、ふと山吹が何かに気づいたようにわたしの顔を覗き込んだ。

おでこが当たりそうなくらい近い。

わたしと目が合うと端麗な顔がふわりと緩んだ。


「・・・もしかして甘えてます?」


山吹の顔の良さも相まって顔に熱が集まりだした。

そんなつもりはなかった。

でもそう言われてしまうと変に意識してしまう。


「ち、違うわ。わたしはただ、貴方の主人としてお見送りをしようと・・・」
「素直じゃないところも可愛らしいですね」


それじゃあ本当にわたしが甘えているみたいだ。

そういうんじゃない。

甘えているんだったらこんなに気分が沈んでいるわけがない。


「甘えているんじゃなくて、寂しがってるの!!」


つい本音がでてハッとした時には、山吹は既に満面の笑みを浮かべていた。


「それはそれで大変お可愛いです」


焦って声を上げたことだけではなく、悟られないようにしていたことをあっさり自分でバラしてしまって恥ずかしい。


「そんなに寂しいならそうですね・・・ルミさんを少し貸していただけますか?」
「?」

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