ふたりぼっちの孤城

言われた通りルミを渡すと、山吹はそれを抱き抱えたままネクタイを緩めた。

普段はきっちり首元までネクタイを締めているので新鮮だ。


(なんっか色っぽい・・・)


その仕草に釘付けになっていると、山吹は普通にネクタイを解き後ろを向いた。

ルミをサイドテーブルに置いて何かしているようだが見えない。

背中を眺めていると1分も経たないうちに山吹は振り返り、勿体ぶりながらルミをわたしの膝の上に乗せた。


「はい、どうぞ」
「山吹のネクタイ・・・?」
「そうです。寂しいときはこの子を私だと思って大事にして下さいね」


いつも抱きしめているルミから山吹の匂いがして落ち着く。

変質者のような言い方だが、当の本人にばれなければいいだろう。


「・・・仕方ないから、そういうことにしておくわね」


山吹は優しい。

だからわたしが駄々を捏ねている限り、ずっとそばに居てくれるのだろう。

自身は明日朝早いというのに。


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