ふたりぼっちの孤城
「わたくしは杏お嬢様の幸せが1番ですので」


麻生はよどみなく言いきった。

そして試すようにわたしに笑いかけた。


「それに椿お嬢様にとっても悪い話ではないと思いますよ」
「どういう意味?」


わたしが顔をしかめると麻生は挑発的に話を続けた。


「藤啓一は山吹理人には劣りますが、優秀な人材ですので貴方にぴったりだと考えたのです」


言葉の節々に棘を感じる。

気分が悪い。


「山吹はわたしとは不釣り合いだと?」


わたしが睨みつけても表情ひとつ変わらない。

藤と違って肝が据わりきっているようだ。

馬鹿にしている気さえする。


「彼が専属だと貴方も荷が重いでしょう?」
「重くないわ。むしろとても居心地が良いくらいよ」


すかさず言い返すと麻生が鼻で笑い満面の笑みを浮かべた。


「それは彼の我慢の上に成り立っていたのです。現に今、4日間もお休みをとっているじゃないですか」


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