ふたりぼっちの孤城
わたしが家に帰ってきて早々、柊が嬉しそうに出迎えてくれた。

山吹のように車に乗って一緒に登下校するなんてこと普通はしない。

山吹はわたしに対して過保護だ。

そのせいで今、情報戦で遅れをとっている。

将来の準備だとかふわっとした情報じゃなくて、行き先だとか連絡が取れなくこととか言ってくれていれば麻生の発言を気にしなくて済んだのに。

今まで無条件に信じていたことが、他の人と関わったことで揺らいでいる。

わたしと山吹はずっと不安定なところにいたのだと突きつけられたようだ。

鬱々とした気持ちのまま目の前に用意されたアップルパイは4号サイズだった。


「この量はわたし1人では食べ切れないわ。柊も手伝って」
「宜しいのですか?」
「えぇ」


こういうときは誰かと話すことに限る。

とは言っても山吹以外に相手してもらった記憶はほとんどないんだけど。


(山吹以外なら・・・お母様ぐらいかしらね)


そんな感傷に浸っている場合じゃない。

今は柊だ。出来るだけ情報を収集しておきたい。

何故理沙は来ないのか。
何故3日間別の人を寄越したのか。
その人選に意味はあるのか。

分からないことばかりだ。

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