ふたりぼっちの孤城
わたしの動揺には全く気づかず、柊はなおも話し続けた。


「理人さんってやっぱり優しいですよね〜」
「そうね」
「この前なんて重い荷物は全部持ってくれましたし、ドアも先回りして開けてくれましたし、何かこう・・・紳士!ですよね!」


それぐらいいつもしてくれている。

わたしは山吹の主人だから当たり前。

でもただの同僚である柊の場合はどうだろうか。

そこに何か意味が隠れているのではないだろうか。

男女が2人で出掛けるのはデートだって聞いたことがある。


(考えすぎ、よね)


紅茶を一口飲んで落ち着いた柊は、さっきとか打って変わって小声で話し出した。

まるで内緒話をするかのように。


「それに手だって握ってくれたんです」
「どう、いうこと・・・?」
「? そのままの意味ですよ?」


(手を握ってくれたってことは、山吹の方から手を繋いだってこと・・・?)


2人で出掛けて、手を繋ぐ。

そこで嫌な予感がした。

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