ふたりぼっちの孤城
今から急いで準備してギリギリ間に合うぐらいだ。

慌てて支度をして車内で朝食をとった。

絶対わざとだ。

理沙にしてやらてしまった。





「理沙、ちょっと話し相手になりなさい」
「畏まりました」


夕食後のデザートが運ばれてきたタイミングで理沙をそばに呼んだ。

わたしの勉強時間等は何かと理由をつけて逃げられる可能性があるが、食事中は別だ。

飲み物のおかわりを出したり食器を片付けたりと主人のそばに居ることが多いから、わたしはこのときを狙っていた。


「わたしに何か、言わなければいけないことがあるでしょう」
「何のことでしょうか」


理沙はまるでわたしを試しているかのように首を傾げた。

だからわたしは負けじと冷静に当たり前のことを諭す。


「無断で柊達をわたしに寄越したことに関してまだ謝罪されてないわ」
「それも藤から何かありませんでしたか?」
「もちろんあったわ。でもそれとこれは別よ。責任者である貴方がきちんと責任をもって誠心誠意謝るべきだわ。麻生に好き勝手されたことも含めてね」
「それならば謝罪致しますが、その前にひとつ。麻生に好き勝手されたとは?」


あくまでしらばくれる気か。
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