ふたりぼっちの孤城
そうではないととても父の専属なんて務まるはずがない。


(ん?父?・・・・・あぁ、そういうこと?)


そう考えれば腑に落ちた。

一息ついて背もたれに寄りかかり、余裕そうに足を組む。


「わざと麻生に処罰与えなかったのは・・・お父様の意向ね」
「どうしてそのようなお考えに?」


理沙の眉がぴくりと反応した。

どうやら図星のようだ。


「山吹家の人間は主人に忠実なの。だから、主人の意図が関係しない単独での行動なんて有り得ない」
「・・・理人の入れ知恵ですか」
「話を逸らさないでちょうだい。お父様が今、何を考えているのか答えなさい。それで今回の件は不問にしてあげる」


もちろんわたしが1人騒ぎ立てたところでもみ消しにされるだけだ。

理沙の一連の行動は父の意思に反していないのだから。

でも書類上今日だけは理沙はわたしの専属メイド。

そして山吹家の人間は主人に忠実。

だから、わたしは高らかに決定打を放つ。


「貴方が今仕えているのはわたしよ」


まっすぐ理沙を見据えると、理沙は今日初めて最上級の礼をとった。

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