ふたりぼっちの孤城
「ご当主様は理人と柊の婚姻を望まれています」
「・・・・・・えっ?」
一瞬何か聞き間違えたと思った。
だって何故父が柊を後押しするのか理解が出来なかったから。
一介の使用人の人間関係を、実の娘にすら興味がない父が把握しているとは到底と思えない。
「お嬢様は柊家について何か知っていることは御座いますか?」
「柊の?ええっと・・・数年前に傘下に入ったってことぐらいしか」
有栖川家で雇われている使用人にはいくつかのパターンが存在する。
1つ目は山吹家のように代々我が家に仕えてくれているパターン。
2つ目は藤のように専門学校に経て新しく雇われるパターンで3つ目は麻生のように他家の人間が嫁ぐときについてくるパターン。
そして4つ目は傘下に入る際に貢物として直系の人間を使用人として送り出すパターンだ。
柊はこの4つ目に該当する。
「左様ですか。現在柊家は事業に成功し、急成長を遂げています。その関係で独立の動きが見え隠れするようになりました。そこで理人と柊を婚約されることで、有栖川家との関係を絶たせないように画策なさっているのです」
「それならわたしが柊家に嫁ぐとかではないの?」
「その案もありましたが、いつの間にか潰されていました」
(その原因絶対山吹だ!!!)
以前、わたしの婚約話又はお見合い話を知り次第潰していたと言っていた。