ふたりぼっちの孤城
まさかそのせいで自身に飛び火してくるなんて思ってもみなかっただろう。


「何より、柊家当主がそれを望まれています。娘の恋を応援したいとかで」


政略結婚のくせにそんなことがあるのか。

柊が山吹への気持ちを当主に伝えたとは考えにくい。

ということは当主自らそれを悟り手を回しているのか。

世間から恵まれていると称されるわたしの立場なんかより、よっぽど価値があるものを柊はもっている。


「ですから私めは麻生の思惑に賛同し、藤と麻生をここに寄越しました。貴方様が理人ではなく藤と主従関係になり、理人と柊が結ばれれば全て丸く収まりますゆえ」
「あぁ、そう・・・」


わたしと山吹を関係は麻生だけではなく父にも引き離されようとしている。

誰もわたし達が一緒に居続けることを望んでいない。

なのに柊は望まれている。

自身の想いが届く立場にいる。

何がそんなに違うの。


(わたしの方が先に、山吹を─────・・・・・必要としたのに)


気づいたら拳に力を入れていた。

それを解き平然を装う。

そして自然な手つきで紅茶を1口飲み、喉を潤した。

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