ふたりぼっちの孤城
まだ言いたいことは残っている。


「つまり全部山吹次第ってことよね。だって普通はお父様が命じれば事足りるのに、わざわざこんな回りくどいことをしているんだもの」
「それはご当主様への批判ですか」


理沙に凄まれたけれど、山吹に比べれば怖くない。大丈夫。


「ただの事実よ。それともう1つ。きっと貴方達の計画は失敗するわ。山吹はわたしに忠誠を誓っているもの」


この4日間で山吹に対する疑問が生まれたのは事実だ。

でも、わたしに跪いて言った山吹の言葉は嘘じゃない。

それぐらい分かる。


「理人の居場所も知らない貴方様がそれを言いますか」
「!」


(あっ、やらかした)


痛いところを突かれて思わず顔が歪んでしまったところを見て理沙の目が少し開いた。

わたしが反応したことによって理沙に確信を与えてしまったのだ。

ただのかま掛けだったのに、それに引っかかり弱点を晒してしまった。

理沙がそれを見逃すわけが無い。

まるで教祖のようにわたしに教えを説く。


「貴方様も山吹を持て余しているのでしょう。身に余るものは自身の破滅へと繋がりますよ」
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